【ブラウジング:152】楠正憲「不正プログラム判断の混沌:無限アラート事件とCoinhive無罪判決からか考える」『情報処理』v,60, n.6, p.480-482 (2019)

刑法の「不正指令電磁的記録用」の定義に、警察とユーザー、専門家など、利益集団間の理解に齟齬がある。結果として、その反意図性、不正性に関する解釈に利益集団間のバラツキが生じている。

【濫読:558】田中美登里『平成好音一代女』私家版(2019)

著者はFM放送のプロデューサー兼パーソナリティ。その番組は東京FMの「トランス・ワールド・ミュージック・ウェイズ」。その30年間にわたるテーマとそのゲストとのリストが本書の主体。こんなにコストをかけた書籍のあることを私は知らなかった。脱帽。

【ブラウジング:151】山室信一「世界を駆け巡る言葉」『図書』, n.845, p.58-63 (2019)

「外来語」といえば欧米由来のものと思いがちだが、じつは20世紀の初頭にはアジア由来のもの(ヒンディー語など)が少なくなかった。たとえば、パジャマ、マッサージ、ヴェランダ。なぜか。これを著者は問題視する。

【ブラウジング:150】池上高志ほか「人工知能研究は何をめざすか」『科学』, n.1040, p.371-383 ; n.1041,p.460-469 (2019)

6名の研究者による人工知能の基礎論をめぐる座談会記録。参加者は人工生命、アンドロイド、認知神経科学、自然言語処理、人工知能、発達認知科学にわたる。語り口は平易だが、内容はレイパーソンには難解。だが、引用したくなる名台詞(迷台詞?)が目白押…

【ブラウジング:149】竹内啓「統計の信頼性とはなにか」『科学』, v.89, n.5, p.436-441 (2019)

統計は事実そのものではなく、客観的事実を表現したデータである。だから、ここには信頼性の保証が不可欠。その信頼性を放置したところに、今回の毎月勤労統計に関する法律違反が生じた。対策としては専門性と独立性の高い組織を設置することしかない。以上…

【ブラウジング:148】藤山直樹「壁にぶつかりながら」『Publisher’s Review』、n.73, p.1 (2019)

書評でありながら、精神分析の現状報告とも読める。日本の精神分析家の数は50人にすぎないという。

【ブラウジング:147】片山杜秀「プリンス・オブ・ウェールズ」『図書』n.844, p.28-31 (2019)

少年武満徹が最初に文明開化に遭遇したのは、太平洋戦争初頭に伝えられた「プリンス・オブ・ウェールズ」撃沈のニュースであった。これが著者の意見。武満と同世代の私にも、そのニュースの響きが残っている。

【ブラウジング:146】中村士「天文学の歴史はどこまで昔に遡れるか」『UP』n.557, p.1-5 (2019)

自著『古代の星を読み解く』の意図を示す。理系の歴史には誰それの説というものはありえない。現代の天文学と統計学の成果を利用すれば、だれでも同じ結論に到達できるから。ここが文系の歴史学者と方法が異なる点、と説く。

【濫読:557】鈴木重行『嚥下障害:エクササイズ&ストレッチング」、gen社 (2017)

「エクササイズ&ストレッチング」の具体例がなんとも日常的。ここにはなんの緊張感もない。だが、この日常性が「肺炎」というに非日常性に直結する。

【ブラウジング:145】船山隆(訳・編)「作曲家の自画像:サティ」

サティからは「健忘症の回想録」と「批評家論」が紹介されている。とくに後者(批評の批評の批評)はみずからの作品を「家具の音楽」と名づけた音楽家の著述とは考えにくい。とにかく饒舌。こんど訳者と会ったときに確かめてみよう。 船山隆(訳・編)「作曲…

【ブラウジング:144】五十嵐太郎「保守化する東京の景観」『みすず』n.675 p.20-31 (2019)

(1)日本橋の地下化は五輪後の建築需要を抑制するため。(2)景観をどの時代にもどすのか。江戸期か、明治期か、戦後期か。(3)戦後期が年代的には最長であり、しかも前衛的(橋の上に道路を通す)であった。(4)学ぶものを探せば、三菱一号館。

【濫読:556-2】清水幾太郎『わが人生の断片(上)』、文春文庫 (1985)

著者の主張はオルテガそのもの。ただしオルテガにかんする明示的な引用はまったくない。

【濫読:556】清水幾太郎『わが人生の断片(下)』、文春文庫 (1985)

「単独講和」対「全面講和」、「マルクス主義」対「社会学」、「基地反対」対「安全保障」、「六全協」対「ブント」、「実存」対「経験」などの対立のなかで自己流の生き方を貫こうとした人の自伝。 私自身、この時代を知っているつもりであったが、じつは知…

【ブラウジング:143】柳広司「小説の起源:プラトンの『ソクラテスの弁明』」『図書』、n.840 ,p.44-48 (2019)

『ソクラテスの弁明』が最初の小説であったという説。これを可能にしたのが、アテネの民主制であったという。

【ブラウジング:142】山室信一「モダン語、あれ?これ?」『図書』、n.842, p.40-45 (2019)

モダン語とは、辞書には記載されず、文脈によって独自の意味をさす単語とのよし。ここに紹介された多くのモダン語を私は、年寄にもかかわらず、ほとんど理解できない。 このモダン語、SNSとともに、今後、ますます増えていくことだろう。年寄にとっては厄…

【濫読:555】遠藤諭『計算機屋かく戦えり』,ASCII (1996)

日本における計算機の発達史をオーラル・ヒストリーの形でまとめたもの。主流の人よりも、傍流、ユーザーの語りのほうが面白い。たとえば、計算尺、タイガー計算機、オペr-ション・リサーチ、事務計算などの導入に尽力した方がたの。

【ブラウジング:141】山田肇「情報アクセスビリティをめぐる政策の動向」『情報通信学会誌』, v,36, n.1-2, p.17-22 (2018)

平明なかつ包括的な総論。著者も触れてはいるが、情報アクセスビリティはインフラ、そこに寿命の短いIT技術を実装することに問題はないのか、これが気がかり。 なお、この雑誌のアクセスビリティは極めて悪い。活字のフォントがあまりにも小さいので。

【ブラウジング:140】渡邉茂「比較認知科学:忍び寄る擬人主義」、『UP』,v.555 (2019)

認知科学の方法論を、とくに擬人主義を、さまざまな視点から論じた論文。語り口は絶妙。 ただし全体としてなにを主張したいのかについては、話が跳びすぎて、読者がレイパーソンである場合には、いまひとつ困惑。

【濫読:554】読売日本交響楽団『オーケストラ解体新書』中央公論新社(2017)

トリビアルではあるが、聴衆にとっては気になるあれこれを紹介。例えば、プログラムの編成法、チケットの販売法、楽器の運搬、楽譜のバージョンの確認、パート譜の入手法、出演者の急病対策、リハーサルの内幕、楽器の位置決め、楽譜のめくり方、楽譜への書…

【濫読:553】渡辺正峰『脳の知識 機械の意識:脳神経科学の挑戦』中央公論社(2017)

「サーモスタットは意識をもつ。なぜならサーモスタットは環境の温度に反応して屈曲するから」と著者は説く。そして続ける。「この質問は機械が意識をもつかという課題にかかわり、さらに反射的に、人間の意識とはなにか、という論点につながる」と。難解だ…

【ブラウジング:139】K「「編集」の変化の中で考えること」

編集者の目でみると、デジタル編集の問題点は、編集ソフトの影響などで「文字遣いが飼いならされていく」ことだという。文筆家の末席にいる私にとっては、合点のいく意見。 『UP』 n.554, p.57 (2018) 編集後記より

【ブラウジング:138】福島智「情報は文脈と受け手の判断がいのち」

著者はいう。「上質な情報を得るには、文脈の適切な理解とともに、自身の正確な情報ストックの絶えざる更新が不可欠」と。著者は視覚と聴覚を失った人。その強靭な意思に私は脱帽する。 『情報処理』,n.643, p.870-871 (2018)

【ブラウジング:137】文化庁著作権課「著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について」

現行著作権法が崩壊寸前にある、という担当官庁の悲鳴が聞こえる。理由の1:法規範の制定時期が事前から事後に移行しつつある。その2:法規範の制定機能が立法から司法へ移行しつつある。その3:関連規定の柔軟性が求められ、既存の隣接法規との一貫性が…

【ブラウジング:136】須藤靖「レンズ越しの世界」

眼疾により視覚を損傷した物理学者が語る外界と自分との整合性に当惑する話。また、その治療の恐ろしさの話。著者は「クオリア」という言葉こそ使っていないが実証的なクオリア論とも読める。この種のクオリア論を多くの物理学者は避けて通るのだが。 『UP…

【ブラウジング:135】石黒正揮「サイバーセキュリティ経済学」

石黒正揮「サイバーセキュリティ経済学」 副題に「インセンティブの適正化を通じたサイバーセキュリティの確保」とある。これについ著者はいう。残念ながらこの領域には「市場の失敗が」ある、と。その理由は「外部不経済」と「情報の非対称性」にある、とも…

【ブラウジング:134】 佐藤康宏「剽窃指南:日本美術不案内」

剽窃を発見するオンライン・システムがあり、学位論文の主査はまずそれを使う。ところが、ある分野の日本語論文については、それがまったく機能しない。ここが付け目か。という話。 『UP』、n.553, p.114-115 (2018)

【ブラウジング:133】 服部裕子「社会性と音楽の進化」

京大霊長類研究所からの報告。チンパンジーはリズム感をもっている。他者が出す音のリズムに同調する。声を出して同調することもある。ただし、視覚へのリズム(光の点滅)には反応しない。 コミュニケーションの原点を示唆する論文。 . 『科学』, n.1035, p…

【濫読:552】阪上孝・後藤武(編著)『<はかる>科学:計・測・量・謀*****るをめぐる12話』、中公新書 (2007)

<はかる>というと、私たちは、ただちにキログラム原器、標準時、GPSなどを連想する。この書物にもこのような課題が示されてはいる。ただしテーマの多くは、認知科学、人類学などにかかわるものである。とくに衝撃的な論考は「罪の重さをはかる」という…

【ブラウジング:132】齋藤亜矢「二次元と三次元」

両眼視野の使えない人には世界はどう見えるのか。その欠陥を脳がどこまで支えてくれるのか。その実体験を示してくれる。同様の疾患をもった読者には力強いメッセージ。 『図書』, 836号, p.50-53 (2018) より

【濫読:551】 吉岡桂六『俳句における日本語』花神社 (1997)

著者はいう。日本語にはヨーロッパ語のような文法がない。その理由は日本語が膠着語であることによる。だから、結局は辞書にあたるしかない、せめて日本語文法と称するルール集の例外を記憶せよ。・・・とのよし。