【ブラウジング:139】K「「編集」の変化の中で考えること」

編集者の目でみると、デジタル編集の問題点は、編集ソフトの影響などで「文字遣いが飼いならされていく」ことだという。文筆家の末席にいる私にとっては、合点のいく意見。 『UP』 n.554, p.57 (2018) 編集後記より

【ブラウジング:138】福島智「情報は文脈と受け手の判断がいのち」

著者はいう。「上質な情報を得るには、文脈の適切な理解とともに、自身の正確な情報ストックの絶えざる更新が不可欠」と。著者は視覚と聴覚を失った人。その強靭な意思に私は脱帽する。 『情報処理』,n.643, p.870-871 (2018)

【ブラウジング:137】文化庁著作権課「著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について」

現行著作権法が崩壊寸前にある、という担当官庁の悲鳴が聞こえる。理由の1:法規範の制定時期が事前から事後に移行しつつある。その2:法規範の制定機能が立法から司法へ移行しつつある。その3:関連規定の柔軟性が求められ、既存の隣接法規との一貫性が…

【ブラウジング:136】須藤靖「レンズ越しの世界」

眼疾により視覚を損傷した物理学者が語る外界と自分との整合性に当惑する話。また、その治療の恐ろしさの話。著者は「クオリア」という言葉こそ使っていないが実証的なクオリア論とも読める。この種のクオリア論を多くの物理学者は避けて通るのだが。 『UP…

【ブラウジング:135】石黒正揮「サイバーセキュリティ経済学」

石黒正揮「サイバーセキュリティ経済学」 副題に「インセンティブの適正化を通じたサイバーセキュリティの確保」とある。これについ著者はいう。残念ながらこの領域には「市場の失敗が」ある、と。その理由は「外部不経済」と「情報の非対称性」にある、とも…

【ブラウジング:134】 佐藤康宏「剽窃指南:日本美術不案内」

剽窃を発見するオンライン・システムがあり、学位論文の主査はまずそれを使う。ところが、ある分野の日本語論文については、それがまったく機能しない。ここが付け目か。という話。 『UP』、n.553, p.114-115 (2018)

【ブラウジング:133】 服部裕子「社会性と音楽の進化」

京大霊長類研究所からの報告。チンパンジーはリズム感をもっている。他者が出す音のリズムに同調する。声を出して同調することもある。ただし、視覚へのリズム(光の点滅)には反応しない。 コミュニケーションの原点を示唆する論文。 . 『科学』, n.1035, p…

【濫読:552】阪上孝・後藤武(編著)『<はかる>科学:計・測・量・謀*****るをめぐる12話』、中公新書 (2007)

<はかる>というと、私たちは、ただちにキログラム原器、標準時、GPSなどを連想する。この書物にもこのような課題が示されてはいる。ただしテーマの多くは、認知科学、人類学などにかかわるものである。とくに衝撃的な論考は「罪の重さをはかる」という…

【ブラウジング:132】齋藤亜矢「二次元と三次元」

両眼視野の使えない人には世界はどう見えるのか。その欠陥を脳がどこまで支えてくれるのか。その実体験を示してくれる。同様の疾患をもった読者には力強いメッセージ。 『図書』, 836号, p.50-53 (2018) より

【濫読:551】 吉岡桂六『俳句における日本語』花神社 (1997)

著者はいう。日本語にはヨーロッパ語のような文法がない。その理由は日本語が膠着語であることによる。だから、結局は辞書にあたるしかない、せめて日本語文法と称するルール集の例外を記憶せよ。・・・とのよし。

【ブラウジング:131】 福沢諭吉「交際もまた小出しにすべし:福翁百話(五十八)」

フェイスブックはこのところ評判がよくない。だが、思いがけなくも、フェイスブックに好意的ともいえる意見を発見した。それを引用しておく。 「平生さしたる要用はなきときにも、折々一筆の短文にて、互いに音信を通ずるの習慣を成し来れば、マサカの時の大…

【濫読80年:550】高崎晴夫『プライバシーの経済学』勁草書房 (2018)

サイバー空間では、プライバシーについて秘匿と開放との意見が衝突している。双方の折り合いはとれるか。著者はこの重い課題を論じる。 ここでは「忘れられる権利」が紹介されているが、読者である私は「忘れられない権利」も必要と考える。すでに現在、サイ…

【ブラウジング:130】 山内一也「体を捨て、情報として生きる]

逆転写酵素の発見以後の分子生物学の研究史。偶然が生物の進化に関与する。それを現在でも同時代的に発見できる。という刺激的な話。 『みすず』, n.664, p.50-58 (2017) より

【ブラウジング:129】 新井健司「訳詞について」

訳詞は二次的著作物。これまで著作権料の分配については不利な立場に置かれてきた。それがSNSの普及により、さらに悪化したが、これは現行制度が不備だから、と著者はいう。 私は現行制度がそもそも不合理な存在であり、その欠陥のしわ寄せをもろに受けてい…

【濫読:549】 竹村彰通『データサイエンス入門』,岩波新書 (2018)

データサイエンスの入門書。このテーマにかかわるバズ用語(多様かつ激変する)について、その解釈、位置づけ、相互関係が的確に示される。、 これ1冊でデータサイエンスのなんであるか、しろうとにも理解できる。

【濫読:548】 芥川真澄(監修)新三人の会(著)『日本の音楽家シリーズ:芥川也寸志』

「やぶにらみの音楽論」(FM放送)と「祖国の山河に」(歌声運動)で育った世代にとっては楽しい読み物。 秀逸な話は「シラミの歌」。「ソラ、ソラ、シラミ。ドラ、ドラ、シラミ。ミレド、ミレド、シラミ、シラミ」この軽妙な歌は芥川也寸志と団伊玖麿とが…

【ブラウジング:128】 依田高典「人間の嘘と不道徳を解き明かす」

伝統的な経済学においては、人間は利己的かつ合理的に行動する。だから見えざる手が働くことになる。しかし市場にはどんな悪事であっても平然とこなす悪者も参加する。この事実を包みこんだ学説が行動経済学になる。ただし、ただし悪者自身はその経済学の外…

【濫読:525−2】英『エコノミスト』編集部(土方奈美訳)『2050年の技術:英『エコノミスト』誌は予測する』,文芸春秋 (2017), p.301-317

プライバシーはどうなるのか? いま、「忘れられない権利」が議論されているが、「抹消されない権利」も大切になるだろう。こんなことを読み手に考えさせる記述もある。

【濫読:541】加藤周一・中村真一郎・福永武彦『1946文学的考察』、真善美社(1947) 

用紙は仙花紙。定価80円。表紙は西洋風の線描。戦後の匂いが芬々。読者の私は中学生だった。70年ぶりの再会。 冒頭に加藤の「新しき星菫派に就いて」という評論がある。いま読むと、自己批判の書かとつい思ってしまう。だが、当時を振り帰ってみると、そ…

【ブラウジング:127】好田誠(口述)「スピントロニクスが起こすコンピューターの飛躍的発展」

スピントロニクスという耳慣れない研究分野の話。この技術によってCPUやメモリー(外部メモリーも)に不揮発性をもたせることができるという。このとき、たとえば省電力型のメモリーが実現される。 『Nextcom』, v.35, p.34-39 (2018) より

【ブラウジング:126】津山洋楽資料館(編・発行)『絵画史料に見る江戸の洋楽事始』(2017)

長崎出島にはじまり、蘭学者、ペリー来航にかかわる洋楽関連資料のカタログ。なぜ、津山かといえば、ここは蘭学者・宇田川榕菴の出身地であるから、という。かれは音律の紹介者であり、ピアノの演奏もシーボルトから聞いたらしい。

【ブラウジング:125】折田明子「死後のデータとプライバシ」

SNS上、死後の本人情報はどう扱われるのか。その現状は。どんな処置をするにも本人確認の条件が必須。 『情報処理』,v.59, n.7, p.606-609 (2018)より

【濫読:540】ウンベルト・エーコ(和田忠彦訳)『ウンベルト・エーコの文体練習』新潮社 (1992)

大知識人によるフェイク的書評集。たとえばイタリヤ中央銀行の紙幣を書物と見立てた書評。紙幣はまず印刷物、それも多数出版される。しかも高価。ただし、その印刷物には芸術的な(ただし意味不明な)肖像画が印刷されている。・・・といった調子。

【ブラウジング:124】中島秀之「情報という世界観」

情報は物理世界の制約を受けないので、思いつけばどんなシステムでも作れてしまう。これが結論。 これまで、情報論といえばシャノンの理論がでてくることに私は違和感をもってきたが、その違和感をこの論文は明快に解いてくれた。 『情報処理』 v,59, n,9, p…

【ブラウジング:123】渡邉茂「行動主義宣言!」

20世紀初頭における行動心理学史。人間と動物とのあいだには区別を設けない。偽鼠主義ともいわれるという。つまり脳抜きの心理学。目的は人間行動の予測と制御。このへんの論理、読み物としてしろうとにも理解しやすい。 『UP』, n.549, p.13-22 (2018)

【ブラウジング:122】坂井修一「ブロックチェーンの光と影」

その特徴は、集中管理機構なし、信頼関係なしのユーザー間での正しいデータ共有とデータ更新にあるという。ただし51%のユーザーが結託すれば、上記の特性は失われるともいう。 『UP』, n548 (2018)

【濫読:539】堀田善衛「広場の孤独」

朝鮮戦争下の日本を題材としている。読み手の私は著者よりもはるかに若かったが、朝鮮戦争下で見たものはまったく別ものだった。これは世代が違うということでなく、著者がプチブルであり、私が大衆の一員にすぎなかった、ということに尽きるだろう。観念的…

【濫読:538】スティーヴン・カーン(浅野敏夫訳)『時間の文化史:時間と空間の文化(1880-1918)/上巻』、法政大学出版局 (1993)

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシ−ズ』とアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論とは、同一の文化的所産だ、といった議論を押し通す。なぜならば双方はアナロジーで互いに射影できるから、と。著者の猪突猛進ぶりに脱帽。

【ブラウジング:121】福井弥己郎・岩下成人「痛みの機能的脳画像診断」

痛みの理解は、どこが、どれほど、という視点、どんな情動によって、という視点、どんな問い掛けによって、という視点からなされなければならない。だが、じつは制御しうる、というのが著者の主張、いや希望か。 『ペインクリニック学会誌』 v.17, n.4 p.469…

【読書80年:537】茨木のり子『歳月』、花神社 (2007)

伴侶への悼辞。見事な夫婦像。