【回顧2】 コンピュータの歴史:1970年代に刊行のもの

(1)J.M.ローゼンバーグ(松平誠訳)『コンピュータの先駆者たち』  TBS出版 (1972)
(2)H.H.ゴールドスタイン(末包良太他訳)『計算機の歴史』 共立出版 (1979年)
(3)E.C.バークレー(高橋秀俊訳)『人工頭脳』 みすず書房 (1957年)
(4)北正満 『IBMの挑戦』 共立出版 (1978年)
(5)北正満 『IBMとの攻防』 共立出版 (1980年)
(6)南沢宣郎 『日本コンピューター発達史』 日本経済新聞 (1978年)
(7)高橋秀俊 『電子計算機の誕生』 中央公論社 (1972年)
(8)M.キャンベルケリー(末包良太訳) 『ザ・コンピュータ・エイジ』 共立出版 (1979年)

 最初のコンピュータであるエニアックが完成したのは1946年であった。もう半世紀も昔のこととなる。コンピュータ屋はだいたい未来指向型の人間がほとんどだが、この世界も考えてみれば、昔語りに耳を傾けてもよいくらいの経験をすでに積んでいるわけだ。 (ついでながら、コンピュータを最初に発明したのは、ドイツのツーゼとも、イギリスのチューリングともいわれている)。
 コンピュータの歴史を読んでどんな効能があるか、といっても返事のしようもないが、そうしたことはヌキにして、いくつかを紹介しよう。
 『コンピュータの先駆者たち』は、パスカルライプニッツバベッジ、バロース、ホレリス、ワトソン、エッカート、ノイマンチューリングといった馴染みの深い人々の列伝である。
 人間的側面に焦点をあてた読物である。エビソードが多いので読んで楽しく、そのわりには、のぞき見的な低劣さはない。
 『計算機の歴史』はサブタイトルに「パスカルからノイマンまで」とある。邦訳で400ベージ以上も分量のある本格的な歴史書。ローゼンバーグの本に技術的視点を加えたような本。ただし、エピソードにもこと欠かない。(歴史書の醍醐味は良質のエピソードにある。)
 『人工頭脳』はMIT、ハーバード大学ベル研究所などが1940年代に開発した自動計算機の紹介をする。もちろん、エニアックも加算速度は毎秒5000回などと紹介されている。原著のタイトルを直訳すれば『巨大頭脳:考える機械』となる。
 『IBMの挑戦』と『IBMとの攻防』の2冊はコンピュータ業界の発展を、IBMを中心として見たもの。計数的な資料を引用しながら業界の独占と競争の姿を語っている。ユーザーにとってみれば、往時のコンピュータ選択の意思決定が当をえていたかどうか、それを振り返るよすがとなろう。メーカーにとってみれば、それこそ自社の過去の戦略と照合してみる興味をそそられるだろう。(著者は通産省の外郭団体の人。北正満は筆名。)
 『日本コンピューター発達史』は、日本のコンピュータ・ユーザーの第一人者が、みずから関わってきたコンピュータ利用の歴史を、冷静に記述したもの。北氏の本と合わせて読むと、日本側の努力が浮きぼりになって面白い。
 『電子計算機の誕生』は日本のコンピュータの草分けの時代に評判になったパラメトロン計算機について、その開発の経緯を当事者が語ったもの。現在の日本のコンピュータ技術の出発点が紹介されている。
 『ザ・コンピュータ・エイジ』もバスカルに始まる。システム/360が出現するころまでが書かれている。写真が豊富なこと。著者が英国人であるために、英国の事情も紹介されていること。これが特徴だ。

『コンピュータ・レポート』 24巻6号 (1984年)