【208冊目】 月尾嘉男編 『サイバーテクノロジー』 NTT出版 (1990年)

90年代を予測するための本。さらに技術について1冊。
 コンピュータ技術も、新しい展開期をむかえている。とくに画像、映像の分野で変化が激しい。それも、実験的、研究的な段階はどうやら終わり、そろそろ実務の世界にはいりかけている気配である。
 この本は、そうした新技術のパイオニアたちが、自分の仕事の意味と経験を自由に語ったものである。たとえば「アーティフィシァル・リアリティーの挑戦」と題する第2章をみよう。
 まず、バーチャル・リアリティーについて武邑光裕氏が話す。氏はこの技術にもとづくシミュレーションを紹介しつつ、現実と非現実との協会が曖昧になってきた、とこわい指摘する。
 つぎに、CGアニメーションについて笹田剛史氏が語る。氏はこの技法を都市計画に応用したばあい、これがいかに地域住民参加の契機を作るか、いかに住民と自治体の合意形成に役立つか、ということを実例で紹介する。
 最後に、CGアートの川口洋一郎氏が登場する。氏は、コンピュータでオリジナルな作品を作る経験を述べ、それはあくまでも一品生産の行為であり、芸術創造の極意とまったく変わりない、と主張する。
 新しいメディアが生まれた。それを実感させる本である。

『コンピュートピア』 1月号 (1991年)