【紹介3】 『年報 科学・技術・社会:第1巻(創刊号)』 (1992年)

【2012年の注】 本誌は本年、21号を刊行した。執筆者と読者とが学会を設立した。

科学社会学に関する新しい雑誌が創刊された。正式にレフェリーがおり、巻末にもきちんとした投稿規定がある。つまり、学術雑誌の体裁をとっている。
 だが、この雑誌は一般人でも面白く読める。まずテーマが細切れではない。しかも論文が自立していて、参照論文をみなくとも理解できる。ということで、ここではアマチュアの視点で、この新雑誌を紹介したい。
 巻頭で編集者が語る。「科学技術は予想もしなかった局面、予想もしなかった仕方で、便益と社会問題の双方をひとしく社会にもたらす。どのような構造が産業社会に埋め込まれており、その構造下で科学技術はどのようなふるまい方をするのだろう。このテーマに取り組む」――これが趣旨。
「・典型的事例の比較研究、・理論的枠組みや関連学説の吟味、・実証的裏付けをもつ科学・技術・社会インタフェースの文明論的展望」――これが編集方針。
 冒頭に、吉岡斉氏の「日本の原子力体制の形成と展開」が登場する。原子力問題については、ほとんどの場合、著者の党派性によって、冷静な事実認識が曇らされる議論になる。この点、著者の視点は、(党派性があるにもかかわらず)冷静である。
 つぎは、沢田芳郎氏の「科学技術と企業:国家関係」である。著者は1つのモデルを提案し、これを使って、SSC問題を料理している。もう少しSSCに焦点を当ててもらえたらな、というのは望蜀の感か。
 ついで、田中浩朗氏の「科学者の社会学と科学知識の社会学」と若松征男氏の「ECの科学技術政策」が続く。どちらも、評者のような門外漢には、それぞれのテーマに関するミニマム・エッセンシャルズを与えてくれる。とくに前者は、総説の模範といってもよいかも。
 つぎは橋本毅彦氏の「<諮問>から<研究>へ」という論文である。これは20世紀初頭における航空機研究の推移を、英国政府を政策を主体にたどったものである。理論家と実験家との相剋、米国との競争など、読み物としても秀逸。
 最後は、M・ヒロオカ氏他の「日本企業における科学」(英文)である。「企業は研究成果を発表しているか」「それは基礎研究か」といった設問に対して計量的に調査をしたものである。意外な結論。企業人であれば、読んで損しない、という論文。
 注文を1一つ。どの論文にもキーワードが付与されているが、粗すぎる。データベース化されると、これでは役に立たないはず。
 いまのように仲間内だけの雑誌ではないよ、という姿勢を今後も持ちつづけて欲しい。次号が楽しみ。

初出失念