【218冊目】 ヨアヒム・ラートカウ(海老根剛・森田直子訳) 『ドイツ反原発運動小史:原子力産業・核エネルギー・公共性』 みすず書房 (2012年)

脱原発にドイツは「成功」した。この本の帯にはこう書いてある。だが、この本を読むかぎり、どんな勢力によって、どのような戦略によって、その「成功」がもたらされたのか、かならずしも明確ではない。論点があまりにも多く、関係者の離合集散がこれまたしばしばだったからである。
 評者の読後の理解を示せば、脱原発がドイツで成功し、日本で成功にいたらなかったのは、初期条件と境界条件とが異なったためだろう。初期条件が異なるとは、ドイツが連邦制であり、原発の建設許可が州政府によってなされたことに対し、日本ではそれが中央政府によってなされてきたことである。境界条件が異なるとは、ドイツが周辺諸国と地理的にも政治的にも友好的であり、周辺諸国から電力を輸入できることであり、日本は周辺諸国とは地理的、政治的に孤立しており、エネルギー問題を自前で処理しなければならない、ということだろう。
 著者は、当初原発導入派、のちに反原発に転じた人であるとのこと。そのうえ、記述に事実と感想とが絡んでいて、読みにくい点もある。

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