【224冊目】 前野和久 『INSのことがわかる本』 日本実業出版社 (1983年)

【2012年の注】 INSは Information Network System の略。1980年代前半のバズ用語。電電公社の北原安定氏(のちに副総裁)が1979年に提唱した。私は、世田谷大停電について、北原氏と対談したことがあるが、かれは通信とコンピュータとはじつは折り合いが悪い、とこぼしていた。

INSにかんしては、いまや情報は私たちのまわりに溢れている。それでは、だれでもINSについて広く見渡した展望をもっているかというと、ちょっと怪しい。それは、断片的な情報がやたらと横行しているからだ。どこの会社がどこに参入した、などというニュースが毎日ばらまかれている。
 この本は、こうした風潮のなかにあって、めずらしく整理のいきとどいたものである。この本の著者は新聞記者である。新聞記者の書いた本は、とかく日々のニュースを切り張りしたものが多いが、この本にはそれがまったくない。それでは、なにがあるかといえば、INSがなにをもたらすかについて、要領のよい見晴らしを紹介してくれるわけだ。
 この本は、まず近未来のINS社会の姿を、3年ごとに、また受け手の世代別に、予測してみせる。これに技術の解説、サービス・メニューの紹介が続く。そのあと、家庭と産業、さらに社会の変革についてその見通しが語られる。
 とくに、産業と社会の章については、読んで背筋の寒くなる人がいるかもしれない。ここには、どんな企業が生き残れるか、といった話がある。
 というわけでこの本を、一般の読者に、INSの入門書として勧めたい。通勤時に読める本である。
 ただしこの本は、INSの技術的側面については詳しくない。そうしたことを勉強したい初心者には、北原安定著『テレコム革命』(徳間書店、1983年)を推薦する。この本には、通信技術の歴史もエピソードまじりに語られていて楽しい。

日経コミュニケーション』 巻号不明 (1984年)