【読書80年:521】 D.プライス(島尾永康訳)『リトルサイエンス・ビッグサイエンス:科学の科学・科学情報』,創元社(1970) 1

20世紀後半、先進国ではあらゆる分野にわたり成長が続いた。未来予測についても、なんの疑義もなく、成長モデルが提案された。
 成長モデルといえば、本誌の読者諸氏は科学史家デレック・デ=ソラ=プライスの『リトルサイエンス・ビッグサイエンス』を思い出すだろう。原著の刊行は1963年である。ここで著者は科学にかかわるさまざまな指標を時系列に示している。それらはいずれも増大の傾向をもっており、その傾向をかれは「倍増期間」という指標で整理している。その一部を引用しておこう。

100年:英国人名事典の項目
50年:労働力、大学数
20年:化学元素の数、器具の精度
15年:学士号、科学雑誌
10年:小惑星の数、米国の電話数
 5年:海外通話数、鉄の透磁率
 
 多くの指標は縦軸に半対数目盛を振って図表化すると、時間とともに直線的に右肩上がりとなる。この環境のなかで、プライスは研究者数とその成果である論文数の増大傾向に注意をうながしている。
研究者数の場合、倍増期間は15年、3世代が同時に現役として働いているだろう。いっぽう、人口の倍増期間は労働力のそれで示すことができるだろう。とすれば、つぎのような未来が出現するはずだ。

男、女、イヌ1匹について、科学者2人となる日が近い。

そういえば、医学研究者のデイビッド・デュラックは「医学情報の重さ」という論文を発表している(注)。かれは言う。医学分野の索引誌『インデクッス・メディカス』(1879年創刊)は1940年には年間2キログラムであったが、これが1970年代には30キログラムとなっている。共著論文が増え、紙は薄くなり、活字は小さくなり、余白は狭くなっているにもかかわらず。

(注)David T. Durack & M.B. Phil ‘The weight of medical knowledge, “The New England Journal of Medicine”, v.298, pp.773-775 (1978)


出所:名和小太郎「未来を回顧する」『情報管理』、v.x60, n.5, p.522