【読書80年:525】 英『エコノミスト』編集部(土方奈美訳)『2050年の技術:英『エコノミスト』誌は予測する』,文芸春秋 (2017), p.246-265

対象を技術分野にかぎる未来予測は20世紀以降、数多く発表されてきた。その代表的な例に、レイ・カーツワイルのシンギュラリティ論がある。
この理論の骨子はつぎのようになっている。第1に、ヒトは有機物と無機物とから構成される。前者は生物体としての部分、後者は人工物つまり技術的な道具――IT機器など――としての部分である。第2に、前者は算術級数的に成長するのみであるが、後者は幾何級数的に成長する。したがって第3に、未来のある時点で、有機的な身体――とくに脳――は無機的な人工物によって代替される。この代替はヒトの脳をAIに接続することで実現する。
 カーツワイルはこの代替の実現する点を「シンギュラリティ」と呼び、それが2045年に生じると予測している。カーツワイルはこの時点まで生き延びるために、毎日200錠以上の栄養補給剤を服用しているという。
 シンギュラリティ論の各論のひとつとして、2050年には拡張現実が眼球に組み込める、という予測も出ている2)。
 ここでは技術と資本との成長がヒト自身のそれに優越することになる。とすれば、この論はヒトの社会にとっては禁忌破壊的な意味をもつことになるだろう。

出所:名和小太郎「未来を回顧する」『情報管理』、v.x60, n.5, p.522
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/johokanri/60/7/_contents/-char/ja